写メ日記
ついに手に入れたサッカー大会への切符。
上級生の枠で出場することを宣告されたハク少年の高鳴る胸の鼓動を前に、
日めくりカレンダーは刻々とその身を削り落として、「大会!」と赤丸で囲まれたその日が、気づけば眼前に立ちはだかっていたのでした。
迎えた当日。電車を降りて、慣れない海辺のグラウンドまで歩く。その足取りは心臓の鼓動とは反対に重くて鈍く、その様子を見て察した母が「緊張してんなぁ〜」と笑ってる。
遠くから海を撫でて吹き抜ける強い風が、肩まであったロン毛の髪の毛を激しく揺らす。
会場には無数の人影、子どもに大人にサッカーボール、メガホンから鳴り響く何を言ってるのかわからない重い声。
手早く受付を済ませると、各チームごとの列に並ぶよう指示され、見慣れた顔ぶれが並ぶ集団の方へ向かう。
「緊張するなぁ」「やばいなぁ」
そんな会話を滔々と続けた先、自分たちのチームの名前がメガホンを通して叫ばれる。
気づけばコートの中。
「よろしくお願いします」
軽く挨拶を交わして相手を見る。自分より20cmはあるであろう、しっかりした体躯の上級生。
蛇に睨まれたカエルのように、自分を見下ろす怪物に狼狽して、審判の「先行!」の掛け声でハッと我にかえる。
キック・オフ。
試合の始まりを告げるギャラホルンの音が鼓膜を伝うと、眠っていたアドレナリンが目を覚まして狼煙を上げ、反射的に動いた左足は味方のパスを完璧に受け止め、全身にたぎる興奮は快感へと変わっていた。
2-0
熱い想いはついぞゴールネットに達することはなく、潤む目を何度擦っても結果が変わることはありませんでした。
けれどあの日一番楽しんだのは、一番笑ってプレイしたのは、紛れもなく自分自身だったと自信をもって言える。
あれが僕の、人生で初めての成功体験だったのかもしれない。
競い合いはあくまでそれを得るための媒体にすぎず、成功の定義は勝ち負けの中には潜んでいない。
僕はあの日、楽しんで努力することの気持ちよさを知り、勝敗に一喜一憂せども、大事なのはその過程、その気持ちだと知ることができました。
ハク少年のサッカー戦記は小学生で幕を閉じ、中学校の暗黒期へを姿を変えますが、今はまだ闇の中へ閉まっておきましょう( ^ω^ )
サッカー戦記これにて終了!
嬉しいコメントいつも見てます!ありがとう!