写メ日記
高校時代の親友が何やら傷心中らしい。彼女と喧嘩したとかなんとかで、かなり落ち込んでいる様子だった。
去年の年末に忘年会をやったきり会っていなかったが、久しぶりに2人でご飯を食べた。
普段は5秒に一度意味の分からないボケを繰り出してくる厄介なやつなのだが、やっぱり今日はしんどそうだ。
ただ、訳のわからないTシャツを来て登場してくるところは相変わらずだった。外国人観光客が着ているような意味不明な日本語Tシャツを着ていた。胸元に大きく「日本の自動車」の文字とピンク色の車のイラストが描かれている。全く珍妙なセンスをしてやがる。
ガストで彼の話を聞いた。彼女の話。喧嘩した話。仕事の話。モヤモヤして体調すらも優れないらしい。
僕には話を聞くことしかできなかった。
1時間ほどガストで話し込んでいたのだが、少しずついつもの調子を取り戻してきた親友。だんだん口調も明るくなってきた。
高校時代は黙って僕の消しゴムを口に含んで涎でべちゃべちゃにしてから僕の筆箱に戻すというボケをかましていた彼。
彼が気持ちの悪い言動をすると、僕は安心する。ああいつもの彼だ。
彼はだんだんいろいろな話をするようになった。将来の夢の話、就活時代の話、最近気になっているという風俗の話。ロボットデリヘルとニューハーフヘルスを紹介された。彼もまた、僕と同じく変態だった。
ああ!いつもの彼が戻ってきて嬉しい!!
そして、最近ずっと家で寝込んでいたから体力が落ちているという。なので2人で卓球場に行ってきた。
彼は元卓球部。僕は元テニス部(中学時代)。ボールとラケットさえあれば、言葉は要らない。
僕たちは淡々とラリーを始めた。
「1」『2』「3」『4』「5」『6』「7」『8』……
交互に数を数えながら球を打ち合う。余計な会話はしない。ひたすらラリーだ。
……「64」『65』「66」『67』「68」『69』……
しばらくして休憩をしているとき、彼がボソッと言った。
「ああ、久々に消しゴム食いてぇなあ」
「君が元気になってくれて良かったよ」