2020/7/3最後の夜…飛鳥
「お、イメチェンしたね」
あの3Pの直後、私は髪を切った。胸の下まであるロングヘアーからショートボブにしてダークブラウンから明るめのブラウンにした。
飛鳥君、長い髪が好きって言ったから…
思いを断ち切るために形から入ってみようとしたが、実際の心はうまくゆるがない。
彼が退店するまであと4日、今日が彼と過ごす最後の日、普段通りホテルに先入して彼を待っていたのだ。
「うん…」
彼を迎え入れるために開けていたドアを押さえながら、悲しみや、さみしさをこらえながら答えることがやっとである
彼が入室しすぐに私がベッドに座り、彼が荷物を床に置いた
「美咲、これあげる」
「ん?」
彼が有名洋菓子屋の手提げの紙袋を持っていた
「ここに置いとくね」
「ありがとう…」
ソファーに紙袋を置き、私の横に座った
おもむろにテレビをつけた彼が私を抱き寄せる、今日で最後なんだ…こんな日も。
テレビに写るのはお笑い芸人。楽しそうに笑う彼らのと対照的に静かな私たち。
何分テレビを見ていたであろうか
「もう遅いし、お風呂入る?」
彼がそう切り出す
「うん」
彼が来る前に先に身体を洗っていた、私が服を脱いで髪をあげようとすると
…ない
髪を数十センチ単位で切ったことがある女性ならわかるであろう、あるはずの髪がそこにない違和感にまだ慣れない。
髪なんてまた伸びる、しかししばらくはこの髪がない状態が続く。何ヶ月?
私の恋も、もうない…でも…
身体を洗う彼の横で浴槽につかる、涙が出そう
「入るよ」
「あ、うん」
座っている私の背面に彼が座る
「こっちおいで」
「うん」
彼の両足の間に座り、後ろから抱き寄せられる、普段ならこのときは最高に幸せなのに。
「短いね」
「え?」
私の首を飛鳥が触る
「どうした、失恋でもしたのか?」
わかってるくせに…何も答えることができない
黙って私の髪をなでる
「おもいきったね」
ここまで一気に髪を切ったのは何年ぶりだろう、20年ぶりくらいかな…
そこから記憶はあまりなく、気がついたら私はベッドに座り彼の胸で泣いていた
朝になったらもう二度と会えない、涙が止まらない
どうしてこうなったんだろう
自分でも何がしたいのか、どうなりたかったのかわからず泣いていた
すると彼が私頬に触れて手で涙をぬぐい言った
「最後に一つ、お願い聞いてあげる」
「お願い?」
彼の顔を見た
「もう最後だからね、俺にできることならなんでもいいよ」
薄暗いライトがつく部屋で私の頭をなでる、久しぶりに見た彼の優しい顔。
したかったこと…彼に、してほしかったこと…
「じゃあ…」
息をのんで、抱いていた願望を私は打ち明けた。
「わかった」
彼はそっと私を抱き寄せて、願いを叶えてくれた。