写メ日記
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2024年5月25日 05:05 の投稿
20歳の女の子、知能が遅れている。
私は彼女の食事や生活の世話をしている。
彼女は手をつないでくる。甘えたいのだ。
けれどそれを許すとべったり甘えてきて離れなくなる。
だから他の職員は冷たく思いきり引き離しているが、やっぱり可哀そうだと思う。
家族は彼女を可愛がり、そして彼女を見捨てた。
彼女はべったり甘えてくるが、私は嫌な気持ちは起こらない。
抱きしめてあげればいいがセクハラになる。
マニュアル通りに甘えを拒絶すると、頭を壁や床にたたきつける。
自傷行為をする。額から血を流す。
「やめるんだ」と言って、彼女の額を手で押さえる。
だが、彼女はそのまま思いっきり壁に頭を打ち付けるので、掌を打撲した。
彼女は毎日、同じDVDを見て過ごしている。つまらない毎日。
この現実世界、この日本はとても息苦しくて、窮屈で、幸せが感じられない。
性の歓びの中にしか本当の自由がないようにも思える。
だが、彼女にはその歓びもない。
20歳の女の子。
恋愛したり、旅行したり、最高に楽しい年齢。
監禁された部屋で、わたしは彼女と過ごしている。
彼女の言葉にならない言葉を聞きながら私は思う。
尾崎豊は自由を求めて歌った。私もやっぱり、この小説を完成させなければならない。
シェリー、夢を求めるならば 孤独すら恐れやしないよね
シェリー、ひとりで生きるなら 涙なんか見せちゃいけないよね
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2024年5月16日 22:05 の投稿
その人は、ことばを忘れてゆく。
名詞、形容詞、動詞。
言葉を思い出せない。
言葉が言えない。
だから話すことができない。
忘れてしまう。
だから僕が一つひとつ教えよう。
これは空、
これは薔薇。
これは風。
これは光。
これは秋桜。
https://www.youtube.com/watch?v=1O3ON3lDNsc&t=6s
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2024年5月15日 21:05 の投稿
高校のころ、自転車に乗って家出して日本を一周した。
川のほとりや海辺でテントを張り、あてのない旅を続けた。
波の音を聞きながら、星空を見あげて眠った。
家もない、何もない。
何もないことがたまらなく愉快だった。
今も南の島で野宿することがある。
何もないことが幸せだったりもする。
ところで、あなたは…
https://www.youtube.com/watch?v=2jIzDiAbI0o
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2024年5月11日 21:05 の投稿
私を産んでくれてありがとう。
光を見せてくれてありがとう。
無でよかった。
そんなこと思っていないよ。
生まれ出てよかったよ。
つらいことはたくさんある。
今、この瞬間にも。
けれど、喜びもある。
つらいことばかり避けていたら本当の歓びなんてない。
苦悩を突き抜けたところに、本当の歓びがあるから。
https://www.youtube.com/watch?v=z2bVk_nP9JM
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2024年5月5日 06:05 の投稿
重度の身体障がい者の施設でも働いています。
40歳の女性。
目が見えません。
知的障がいも持っています。
一歳以下の知能しか持っていません。
一日中、四畳半くらいの部屋で隔離されて過ごしています。
家族は面会にも来られません。
私たちは手引きして散歩に連れて行ったりもします。
その時、彼女は手をぎゅっとつないできます。
話すこともできない。
意思を伝えることができない。
それでも何か伝えたがっていることが、ぎゅっとつないでくる手から感じられます。
何のために生まれてきたのだろう。
何のために生きているのだろうって、そう思ってしまう。
それは、そのまま自分自身にも言えます。
この世に生まれ出たこと、老いてゆくこと、死ぬこと。
生まれることは、その苦しみを負うことになります。
いま、薄っすらと夜が明けてきます。
暗い空が、透明な強いブルーへと移り変わってゆきます。
すべては流れ、変わりゆくものたち。
愛も。
だから、ほんのつかの間。
私たちは手を握ったり、身体を交えたりするのでしょう。